エミール・クストリッツァ
えみーるくすとりっつぁ
フォト
58th Cannes Film Festival 2005(with Jury cast) 58th Cannes Film Festival 2005(with Jury cast)(2)
CANNES FILM FESTIVAL 2004 CANNES FILM FESTIVAL 2004(2)
プロフィール
生年月日: 1954/11/24
性別: 男性
出身地: 旧ユーゴ(現ボスニア/ヘルツェゴビナ)・サラエボ
その他:
カンヌ国際映画祭で2度のパルムドールと監督賞を受賞。さらに、ベルリン、ベネチアといった国際映画祭で数々の受賞歴を誇る現代映画界を代表する巨匠のひとり。映画を作り始めたのは、高校時代。73年からプラハ映画学校に留学し、在学中は短編作品「ゲルニカ」(73)でカルロビ・バリ学生映画祭でグランプリを受賞する。「スイート・スイート・ビレッジ」(85)のイジー・メンツェル監督に師事した彼は、卒業後、母国のテレビ局と契約。2本のテレビ作品を手がけたのち、「Do You Remember Dolly Bell?」(81)で長編デビューを飾る。ベネチア映画祭の新人監督賞を受賞したこの作品は、西側のポップ・カルチャーに触れた旧ユーゴの若者のカルチャー・ショックを描いたもの。社会派の題材を独特のユーモアとヒネリをきかせて料理し、アートの領域に高めていくというクストリッツァ作品の特徴は、この第1作から顕著だが、政治に生活を翻弄される一家の物語を6歳の少年の視点からみつめた第2作の「パパは、出張中!」(85)(カンヌ国際映画祭パルムドール、アカデミー外国語映画賞ノミネート)には、もうひとつの大きな特徴である<マジック・リアリズム>の要素も盛り込まれるようになった。主人公の夢遊病の少年が、夜の街を漂うように浮游するシーンがそれで、クストリッツァが敬愛するジャン・ヴィゴの「アタラント号」(34)に影響を受けたと思われるこのファンタジックな趣向は、「アリゾナ・ドリーム」(93)の空を泳ぐオヒョウ、「アンダーグラウンド」(95)の宙に浮かぶ花嫁、「ライフ・イズ・ミラクル」の空飛ぶベッドなどに引き継がれていく。なかでも、第3作の「ジプシーのとき」(88)(カンヌ国際映画祭監督賞)は、クストリッツァの全監督作の中でも、最もマジック・リアリズムの色彩が強い。心優しいロマの少年が、悪の世界に染まっていく様を悲しい宿命のドラマとして描いたこの作品は、「パパは、出張中!」と同様、社会的な弱者の姿をきわめてリアルに切り取っていくかたわら、主人公をささやかな魔法を操る人物に設定したことで、ポエティックな世界へと広がりを見せていく。土着的であると同時に神秘的、現実的であると同時に幻想的な趣をたたえたクストリッツァの作風は、この「ジプシーのとき」でひとつの完成形を見たと言えるだろう。その後、90年に渡米し、ミロシュ・フォアマンの後任としてコロンビア大学映画学科の講師に就任したクストリッツァは、生徒のひとりから持ち込まれたシナリオを元に、ジョニー・デップ、ビンセント・ギャロなどをキャストに迎えた「アリゾナ・ドリーム」(93)(ベルリン国際映画祭銀熊賞)を製作する。アメリカン・ドリームの墓場の情景を、アウトサイダー的な視点から描いたこの作品は、突拍子もない(Larger than Life)夢を追いかける登場人物たちの描写を通じて、風刺とポエムの融合をはかった点に、クストリッツァの野心のほどがうかがえる。クストリッツァの祖国ユーゴの崩壊劇が起きたのは、ちょうどこの「アリゾナ・ドリーム」を撮影していたときのことだ。“アメリカに留まっていること、サラエボに戻らないことへのひどい後悔を、撮影のあいだ毎日感じ、身をふたつに引き裂かれる思いだった”と語るクストリッツァは、旧体制の崩壊とそれに続く内戦の大混乱のニュースを、国外から信じられない思いでみつめることになる。やがてその思いは熟成し、爆発的なパワーを持つ「アンダーグラウンド」(95)(カンヌ国際映画祭パルムドール)という超大作に凝縮されていく。武器商人にだまされ、地下で黙々と武器作りを続ける人々。アイロニーに満ちたシチュエーションを通じて、寓話的に描かれる旧ユーゴの裏面史。国を失った者の怒りと悲しみ、そして破壊の果てに生まれるであろう希望への祈りを、笑いと悪夢がおりなすサーカスとして描き上げたこの作品で、クストリッツァ流のカリカチュアの手法は頂点を極める。それは、映画ファンの目から見れば、フェリーニの「サテリコン」(69)を彷彿させるものだったが、映画を読み誤った人間から“セルビア支持者”のレッテルを貼られたクストリッツァは、はからずも政治的な論争に巻き込まれ、ついには監督引退を宣言するまでになる。その誓いが破られたのは、3年後。「見た人が幸せに帰ってもらえる、人生を感じてもらえるような映画が作りたい」という新たな思いを抱いたクストリッツァは、ロマを主人公にしたドタバタ版「ロミオとジュリエット」ともいうべき「黒猫・白猫」(98)(ベネチア国際映画祭銀獅子賞)を創作。3世代の登場人物たちに、ユーゴの過去、現在、未来を象徴させ、<過去を糧にした未来>への希望を、ポジティブに語り上げた。この後、音楽ドキュメンタリーの「SUPER 8」(01)(シカゴ国際映画祭ドキュメンタリー賞)を経て製作されたのが、「ライフ・イズ・ミラクル」。ボスニア紛争という現実を、現実のままではなく、お伽噺かと思わせるほどの寓話に仕立てあげたこの作品は、これまで挙げたクストリッツァ作品の様々な要素が、あまねく網羅された集大成ともいえる。また最近は05年のカンヌ映画祭で、栄えある審査員長に選出されるなど、名実共にゆるぎない地位を確立している。
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