蜷川幸雄がほれ込んだ吉高由里子という“天然”素材。

バラエティ番組を見ていると、天然系を売りにしたタレントが相変わらずそのおバカっぷりを振りまいており、「天然キャラなお強し」との印象が未だにある。
そんな中、異才を発揮してきているのが、まだ新人で演技をはじめて2年目という吉高由里子(よしたかゆりこ)だ。

吉高は東京都出身で現在アミューズに所属する19歳。ドラマではTBS系「冗談じゃない! 」(第8話)、テレビ朝日系「時効警察」(第6話)などを経て、現在は関西テレビ「あしたの、喜多善男〜世界一不運な男の、奇跡の11日間〜」、NHK大河ドラマ「篤姫」(第4回・第12回)と、着実に話題作に出演している。
しかし驚きなのが映画での活躍ぶり。「夕映え少女 『イタリアの歌』」、「きみの友だち」、「僕の彼女はサイボーグ」など2008年に後悔される映画への出演が目白押しなのだ。

とりわけ最注目なのが、世界的な演出家として知られる蜷川幸雄がメガホンをとった「蛇にピアス」への大抜擢だ。
「蛇にピアス」といえば、作家・金原ひとみの代表作で同氏がわずか20歳と5ヶ月で第130回芥川賞というタイトルを取った出世作。主人公・ルイの葛藤とリアルなセックス描写で話題になった。

「いくら有名だろうと脱ぐ迷いがあるのなら、そんな虚名などいらない」と主演女優はオールヌードが条件。
数々の女優にオーディションのオファーがあったようだが、蜷川がほれ込んだのは、主人公・ルイと同じ19歳の吉高だった。

オーディション中、蜷川が年ごろの女性を気遣う配慮や迷いを察知してか、吉高は思い切った行動をとったとか。
「胸そんなに大きくないけど見ますか?」と、物陰で蜷川にその胸を披露し、蜷川はこの瞬間にその度胸のよさに感動し、配役を即決したという。

「羞恥心を抱えた中での彼女の“飛び方”の格好良さ。脱ぐことで現場が停滞するくらいなら、まだ社会的に認知されていない自由を選びたかった」と蜷川は彼女にかける気持ちを語っている。

しかし、この吉高、別の意味でも“飛んでいる”。

「オーディションでは、てっきり稲川淳二さんに会えると思って行ったら、知らないおじいちゃんがいた。マネジャーに怒られました」

演劇関係者が聞いたら泡を吹いて気絶しそうなほどの、「蜷川幸雄、知りませんでした」発言。
対して「それが逆に良かった。若者の生き血を吸ってやるよ。ドラキュラじじいとしてね」と蜷川も負けていない。

ぶっ飛び女優VSドラキュラじじい――なんだかいろんな意味で今後の展開が楽しみなだ。(古田鉄寿)


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